静岡県裾野市「いわなみキッチンアカデミー」で講演しました

3月7日、静岡県裾野市の「いわなみキッチン」にて講演させていただきました。

いわなみキッチンは、新たな事業創造や起業を促し、地域経済の活性化につながるヒト・モノ・コト・情報の拠点となるフリースペースです。

今回は、このいわなみキッチンで開催されているビジネスセミナー「いわなみキッチンアカデミー」の講師として、お話する機会をいただきました。

いわなみキッチンアカデミーは、さまざまな領域で活躍する女性が講師となり、活動を通じて得た知見を参加者と共有する講座です。地域活性のアイディアやコミュニティビジネスの運営に関するヒントなど、多くの発見や気づきにつながる機会を提供しています。

お声がけくださったのは、静岡県を中心に地域のリーダー育成や新たな地域の魅力の発掘、ビジネスモデル構築などに取り組むNPOサプライズ代表・飯倉清太さん。内閣官房地域活性化伝道師、行政の補助金に頼らない移住定住拠点「ドットツリープロジェクト」仕掛け人でもあります。飯倉さんは、かねてより Yahoo! ニュース特集の記事を読んでくださっていて、それがご縁で今回のことにつながりました。


写真提供:松浦靖さん

当日は飯倉さんをはじめ、裾野市やお隣の三島市などで実際にまちづくり、コミュニティづくりに携わる方々が多数参加されていました。いわば「地方創生」の第一線で活躍するプロの方々を前に、私が話したテーマは『ライターから見た地域 現場から見えた地方の課題と可能性』。いや、正直、ものすごく緊張しました。。。


写真提供:松浦靖さん

今回は、記者としてさまざまな地方の現場に足を運び、取材活動する中で気づいたこと、感じたことについて、率直にお話させていただきました。関連する記事はこちら。

地権者は「ゴースト」 所有者不明地という日本の難題
増える空き家、「スラム化」する老朽マンション 撤去費用を支払うのは誰か
コンパクトシティはなぜ失敗するのか 富山、青森から見る居住の自由
3人に2人が高齢者、群馬県南牧村から人が減った理由
出生率2.81――“子宝”日本一の島が大切にしてきたこと
子ども急増「日本一若いまち」愛知・長久手のまちづくり



スポンサーリンク

超高齢社会と人口減少をどう乗り切るのか?

全国的に増える相続登記未了の土地、空き家。国土交通省が進めるコンパクトシティ化。これらの根底にあるのは、日本が直面する「未曾有の超高齢社会」と「人口減少」です。日本全体の人口のパイが減り続ける以上、各自治体はそれぞれ、多様な施策によって生産年齢人口の定住者を増やそうとがんばっています。

取材を通じて感じたのは、人口増を達成するには必須の3条件があるということ。それは

① 雇用
② 住宅
③ 行政サービス(子育て支援、教育)

この3つなんですね。身もふたもない話ですが、仕事がなく、死ぬまで安心して住める家もなく、子供を育てる環境が整っていないところに、若い世代は住んでくれないんです。

例えば、群馬県南牧村は、この3つを揃えることができず、過疎化や人口減に歯止めがかからない状況に陥りました。かつて村の主産業だった農林業が衰退しはじめても、9割が山林という地理的に不利な条件によって、住宅整備や産業誘致が進まなかったんですね。平地がないから家も工場も建てられなかったんです。

一方、人口増が続く愛知県長久手市は、この3つが見事に揃った典型的な事例です。まず、市内に産業はなくても、両隣に豊田市と名古屋市があるので雇用には困らない。緑の多い住環境や子育て支援を充実させ、ベッドタウンとして人口を増やし続けているわけです。

つまり、地理的な条件っていうのがかなり大きい。この図を見ると、わかりやすいですね。人口が集積している一定規模以上の都市に隣接する自治体が、人口を増やしていることがわかります。


出典:埼玉大学教育学部 谷謙二研究室『人口増加率マップ(2010~2015年)』

裾野市の人口はどうなっているのでしょうか。

総人口は2018年4月時点で52,332人。長久手市と同じぐらいですね。裾野市の人口は、2010(H22年)までほぼ一貫して増加。とくに、農林業から工業(製造業)へ産業転換を果たし、企業誘致に成功した昭和40年代に、大幅な人口増(社会増)となります。平成10年以降も、大企業の工場進出や研究開発部門の移設などが相次ぎ、人口増を支えました。

こちらは裾野市の人口増加率マップ。1995〜2000年(H7〜H12)はおよそ6%の増加率。めっちゃ人が増えています。真っ赤っかですね。

出典:埼玉大学教育学部 谷謙二研究室『人口増加率マップ(2010~2015年)』

一方、2010〜2015年(H22〜H27)になると、一転して人口減になっています。

出典:埼玉大学教育学部 谷謙二研究室『人口増加率マップ(2010~2015年)』

裾野市の人口が減少傾向にある理由とは?

なぜ裾野市の人口は減少に転じてしまったのでしょうか。

ちなみに、裾野市って出生率はすごく高いんですよね。平成20年~24年の合計特殊出生率は「1.82」です。これはお隣の長泉町と並んで、静岡県内で最も高い数値だそうです。つまり、人が減っているのは社会減(転入数を転出数が上回る)の影響が大きい。

平成27年に発表された「裾野市人口ビジョン」によれば、その背景には「子育て世代の流出」があるらしい。裾野市では、平成2年に93.3だった昼夜間人口比率が平成22年に107.4に逆転。これは要するに、裾野市外に住んでる人が増えて、仕事するために裾野市内に流入しているということ。なるほど、これがむかし社会科の授業で勉強した「ドーナツ化現象」ってやつなのか。

つまり、「住みたいけど住めない町」という事情が浮かび上がってきます。住宅整備はどうなっているのかな? と思って裾野市のウェブサイトを調べて見ると、区画整理事業は南部エリア(22.5ha、H13完了)と裾野駅西エリア(17.6ha、〜平成41年完了予定)の2ヶ所。長久手市が昭和40年代から合計600ヘクタールの土地区画整理事業をゴリゴリ進めてきた規模感と比較すると、控えめかなという印象です。

ちなみに裾野市の持ち家率は、平成22年の国勢調査によれば 61.0% で、静岡県内ワースト3位。うむー。やはり、若い子育て世代を呼び込むには、このあたり(子育て世代の住宅対策)を考えることが大事かもしれません。

若い世代にいかに「定住」してもらうかがカギ

一方、住宅政策は、単に格安で借りれる「市営住宅」をたくさん増やせばいいというわけではないんですよね。。

例えば、かつて「子供を産める奇跡の村」と呼ばれた長野県下條村。90年代に3800人だった人口が2005年に4200人まで増え、合計特殊出生率も2006年に「2.03」を記録。大きな話題を集めました(現在の出生率は1.82)。

下條村は、手厚い子育て支援策のほか、破格の安さの村営住宅をたくさん作り、若者の定住を目指していました。11棟の村営集合住宅は、2LDKで周辺相場のほぼ半額という家賃で大人気に。下條村の人口増を支えてきました。

ところが、下條村の総人口は、2008年(4237人)をピークに減少。2018年4月1日時点の人口は、3765人。この10年で、一割以上減ってしまったのです。その理由は、村営住宅に入居するファミリーが「そろそろ持ち家を……」と思ったとき、村内に家を建てられる土地がなかったんですね。さらに、村内には高校がなかったため、子どもが高校入学のタイミングを迎えたファミリーが、通学に便利な自治体へ転出してしまったのです。

若い世代の誘致に成功したら、今度は「定住」してもらわないといけない。そういう2段階の住宅政策というのが大事なんだな……とあらためて思いました。以上のお話は、『文藝春秋』2017年6月号に詳しいので、ぜひご一読を。

周辺自治体との「人の奪い合い」が激化する?

ところで、裾野市のお隣には、21年間連続で人口が増え続けている長泉町が控えています。

長泉町が人口を増やしたのは、若いファミリーの取り込み施策が功を奏した結果といえます。たとえば、年収制限なしに第3子以降の保育料を無料にするなど、突出した子育て支援策で、まさに周辺自治体からファミリー層を呼び込んだわけです。

そのおかげで、長泉町は総務省の財政力指数でも全国18位、静岡県内ではダントツトップとなっています。強い。

ただ、周辺自治体同士で、強烈な呼び込み合戦をしても、お互いに疲弊するだけですよね(財政には限界がありますからね)。そんなわけで、長泉町だけに人口が集中する状況から、静岡県東部エリア全体という視点でファミリー層を増やしていこうじゃないか。という施策も進められているそうです。

静岡県東部地域政策局が、地域全体で(首都圏などから)ファミリー世代を誘致すべく、共通政策の導入を提案。長泉町の施策を参考に、独自の子育て支援策を打ち出しています。

自治体単独の動きだけでなく、周辺自治体との連携もうまく活用しながら人の流入を促す。新しい地域活性化の手法が、今後どのような成果を生むのか期待がかかりますね。

結論:裾野の人たちはとても親切。また遊びにいきたい。

以下は結論でも何でもなく、完全なる余談なんですが、今回身にしみて感じたのがこれ。

「裾野の人々はすごく親切でやさしい」。

じつは私、講演後の質疑応答中に、気分が悪くなって10分ほどぶっ倒れるという大失態を演じてしまったんですね。。。せっかく呼んでくださったのに、参加くださった皆さま、本当に申し訳ありませんでした。。

ところが、そんな私を参加者のみなさんが総がかりで看病してくれまして。。お水をくださったり、ずっと声がけをしてださったりして、本当に親切に介抱していただきました。おかげで10分ほどで復活。その後の懇親会にも参加することができました。

参加されたみなさんの対応には、心から感動しました。しかも、新幹線の都合で懇親会の途中で座抜けした私に、「新幹線の中で食べてください」とおやつを持たせてくれたり、地元産のほうれん草をおみやげにくださったり。本当にありがたかったです。

というわけで、完全に裾野市(と三島市)のファンになってしまいました。それ以来、会う人会う人に「裾野いいですよ」「裾野最高ですよ!」と勝手に宣伝しています。ちなみに、裾野は水餃子が名物らしいですよ! あそびにいったらぜひ賞味してみてください!

裾野市のますますの発展を祈念しつつ、水餃子に思いを馳せながらここらで筆を置きます。I LOVE 裾野。

 

スポンサーリンク

コメントを残す