フリーペーパー『FILT』

2004〜2011年
JT発行のフリーペーパー『FILT』にて
巻頭インタビューなどの記事を担当させていただきました



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『FILT』VOL.39(2009年5月20日発行)より

【SMOKER’S FILE】元祖小悪魔、人生を勇敢に生きる女優、加賀まりこ。

こぼれそうな瞳、生意気そうな唇、アンニュイな表情。1960年代の日本を小悪魔的
な魅力で席巻した女優・加賀まりこの半生は、映画以上にドラマティックだった。
今も昔も自分らしくあり続ける彼女の人生の軌跡に迫る。
Text by Risa Shoji
日本の映画界に舞い降りた、とびきり不機嫌な天使
「振り返れば、ほぼ半世紀、嵐のように生きてきた。ひたすら自分の感性に忠実に。
心に響くものにまっすぐに向かいながら」
 女優・加賀まりこが、自著のエピローグに添えた一文。それは彼女自身の人生を、
どんな言葉よりもよく表現している。。
 彼女は東京・神田に生まれ、神楽坂で育った。中学生でジャズ喫茶に入り浸り、高
校生になる頃にはすでに六本木で遊び回るほど、早熟な少女だった。高校在学中、路
上でスカウトされ、17歳で映画界へ。「僕らが撮る映画にあなたに出て欲しいんです」。
そう言って彼女を見初めたのは、後に巨匠と呼ばれる寺山修司と篠田正浩だった。そ
れは彼女の魅力がいかに際立っていたかを物語るエピソードだろう。
 不満そうに突き出された唇、挑むようにカメラを射る大きな瞳。純真無垢なあどけ
なさと娼婦のようなアンニュイな色気が混在する、強烈な存在感……。人々はそんな
彼女を、一世を風靡したフランスのセックス・シンボルになぞらえて「和製ブリジッ
ト・バルドー」「小悪魔」などと呼ぶようになった。
 中でも、1964年に公開された主演作『月曜日のユカ』の役柄は印象的だ。ナイ
トクラブで片手にグラス、指先にタバコを挟みながら、大勢の男たちを虜にする18歳
のユカ。平気で男と寝るくせに、キスは誰にも許さない。真実の愛が欲しいけれど、
その求め方がわからない。既製のモラルを軽々と飛び越え、傷つきながらも自分らし
く愛を貫こうとするユカの姿は、まるで当時の彼女そのもののようだ。
 媚びることを知らない、不機嫌な天使。そのキャラクターは、スクリーンの外でも
変わらなかった。嘘やごまかしを嫌う彼女の言動は、常に大胆でストレートだった。
突然の女優休業、パリ留学、そして“未婚の母”宣言……。シングルマザーなどという言
葉もない時代、当然のように彼女を強烈なバッシングが襲った。それでも彼女はひる
まなかった。「私が私の子を産んで、何がいけないの?」。そう言って、堂々と振る
舞い続けたのだ。
 世間を敵に回してまで産んだ子との永遠の別れ、その後の結婚・離婚、数え切れな
いほどのラブ・アフェア。彼女自身の言葉にもある通り、その半生はまさに「嵐のよ
う」だった。自分らしくあるため、果敢に人生を切り開いてきたかつての小悪魔は、
年を重ね、いつしか人々に慕われる “姉御” になった。スクリーン以外の場所では決し
て演じず、自分を偽らなかった女優・加賀まりこ。その生き様は、これからも多くの
人々に勇気を与え続けることだろう。

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