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2016.01.29
【後編】次世代型教育の最先端を知るイベント「FabLearn Asia 2015」に参加してきました! | SPECIAL

【後編】次世代型教育の最先端を知るイベント「FabLearn Asia 2015」に参加してきました!


 


 2015年12月12日・13日の2日間にわたり、横浜で開催された次世代型ものづくりにおける教育のあり方を考える国際会議『ファブラーンアジア2015』。私・ライター庄司も”子どもの未来を耕し、育て、伸ばす”をミッションに掲げるメディア「SHINGA FARM」のレポーターとして2日間、会議に参加してきました。今回は"インターネット以来の衝撃"とも言われるデジタルファブリケーション技術の台頭と世界のものづくり教育の最前線について、記事中で伝え切れなかったことをこのブログでもご紹介したいと思います!

※ この記事は前編・後編に分かれています。前編は下記リンクからどうぞ!
【前編】次世代型教育の最先端を知るイベント「FabLearn Asia 2015」に参加してきました!



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© FabLearn Asia 2015 Committee

 2日目スタート! 熱量の高いプレゼンテーションが続く


2日目は、MITでファブラボプログラムを開発・推進するシェリー・ラシター女史のビデオ講演からスタートです。MITの人気講座『How To Make (Almost) Everything(ほぼ何でもつくる方法)』をもとにした無料のオンライン講座『Fab Academy(ファブアカデミー)』の効果や今後の課題について、詳しい紹介がされました。ちなみに、ファブアカデミーは語学力など一定の条件を満たせば、日本のファブラボや大学でも受講可能なのだそうです。

続いては、ITジャーナリストの林信行氏 による「テクノロジーが変える教育の近未来」。長年にわたるテクノロジー・デザイン領域での取材活動をもとに、スマートフォンやソーシャルメディア、3Dプリンティングといった技術の登場で変化を遂げる「教育現場の今」を、豊富な事例とともに俯瞰的に語りました。「今後AI(人工知能)がさらに進化すれば、人間の仕事にはよりクリエイティビティが求められる。教育の中心は、知識を詰め込むことではなく、より全人的な教育、リベラルアーツへシフトしていく必要があるでしょう」(林氏)。

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最新テクノロジーと教育の現場について語るITジャーナリスト・林信行氏。© FabLearn Asia 2015 Committee

情報化社会における"学びとしての創作活動"に言及した 情報学研究者のドミニク・チェン氏、つくる行為にフォーカスしたワークショップで子どもたちの創造力の底上げに貢献する 石戸奈々子氏(NPO「キャンバス」理事長)のプレゼンに続き、午前の部の登壇者によるパネルディスカッションが開かれました。

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「世界を知る最良の方法は自ら作ることである」というアラン・ケイの言葉を引用した情報学研究者のドミニク・チェン氏。© FabLearn Asia 2015 Committee

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これまで延べ35万人の子どもたちにワークショップ届けた実績を誇るNPO「CANVAS」理事長の石戸奈々子氏。© FabLearn Asia 2015 Committee

 同時開催のワークショップがさらにスケールアップ


ランチの後は、前日同様、ワークショップと研究発表です。2日目は、CNCミリングマシンを使って自分のオリジナル基板を作る企画や、身の回りのモノをコントローラーに変えてしまうキット「Makey Makey」を使ったワーク、そして1日目に見事なプレゼンを披露した福岡雙葉高等学校の女子生徒たちによるワークなどが開催されました。とくに、現役女子高生たちがカッティングマシンを使ったオリジナルステッカー作りを指南する講座は大盛況。ほぼ先生たちのサポートなしに生徒たちだけでマシンを操り、海外からの参加者への通訳もこなす姿には、みな驚きを隠せませんでした。

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「もしもJKがものづくりを始めたら」というタイトルにもセンスを感じます。© FabLearn Asia 2015 Committee

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Makey Makey とプログラミング学習ソフトScratch を使ったワークも好評でした。© FabLearn Asia 2015 Committee

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ティンカリング(=いじくりまわすこと)によって歩くオリジナルロボットの制作に挑戦。© FabLearn Asia 2015 Committee

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アメリカンスクール・イン・ジャパンによる「紙でつくる照明」のワークショップ。© FabLearn Asia 2015 Committee

また、国内の実践者による研究発表も、社会課題の解決や地域活性といった文脈でデジタルファブリケーションを活用する事例が多数紹介され、とても興味深かったです。同時開催のものが多く、すべて見て回れなかったことが唯一、悔やまれました。

 多様な人々が「つくりながら学ぶ」体験を共有し続けることが未来につながる


コーヒーブレイクの後は、1日目につづき実践校による特別プレゼンテーション。広尾学園の教務開発統括部長・金子暁氏 と生徒たちによる講演に釘付けになりました。

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広尾学園の教務開発統括部長・金子暁氏。© FabLearn Asia 2015 Committee

8年前の経営危機をきっかけに、革新的な進学コースやICT教育、プログラミング講座を導入した同校。とくに興味深いのが「世界でまだ誰も分かっていないこと」をテーマに、イノベーティブな研究を生徒たちに挑戦させる医進・サイエンスコースの教育方針です。

生徒たちは研究のため英語の論文を読み解いたり、MITがネット上に公開しているコンテンツを日本語に翻訳するなど、研究をきっかけに自発的な学びのサイクルが生まれているとのこと。こうした先進的な取り組みがきっかけとなり、Google社の会長エリック・シュミット氏やカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の教授陣が広尾学園を訪問するなど、日本のみならず世界からも注目を集める存在へと飛躍をつづけています。

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大人顔負けのプレゼンを披露する広尾学園の在校生。© FabLearn Asia 2015 Committee

プレゼンには、在学中の高校生も登壇。学内イベントで3Dプリンターの可能性を力説し、学校に導入してICTルームを設立するまでの経緯をまとめたプレゼンは、ところどころ笑えるポイントを用意するなど、大人顔負けの内容でした。

そして、最後に登壇したのは「ファブラーンアジア2015」の実行委員長を務めた国際STEM学習協会 / ファブラボ鎌倉代表・渡辺ゆうか氏。パーソナルファブリケーションと教育に関する国際会議を今ひらく意味について語りました。

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国際STEM学習協会 / ファブラボ鎌倉代表・渡辺ゆうか氏。© FabLearn Asia 2015 Committee

「私たちの目的は、ファブ(ものづくり)を軸に次世代を生き抜くスキルを持つ人材をより多く育てること。そのためには、国内外からより多様な背景を持つ人々を集め、文字通り「つくりながら学ぶ」体験を共有しながら、未来の教育を考える機会を持ち続けていくことが重要なのです」(渡辺氏)。

渡辺さんからは、2016年度からよりグローバルな展望を目指し、アジア各国と連携した取組み、そして新しいテクノロジーを習得するための学習環境の構築として世界との連携を意識したオンライン講座の開講についても発表されました。渡辺さんたちによる「ローカルとグローバル、リアルとネットの世界をゆるやかにつなげていく」試みについては、こちらに詳しい情報が載っています。ぜひ参考にしてみてください。

ファブラボ鎌倉 Fablab kamakura ウェブサイト

 パネルディスカッションを通して感じた「ものづくり教育の先にあるもの」


さて、ファブラーンアジアのクロージングを飾るのは、特別講演の登壇者たちとモデレーター・若林恵氏(ワイアード日本版編集長)によるパネルディスカッション。壇上では、若林さんからの「結局、ものづくり教育とはどこがゴールなのか?」という鋭い指摘を中心に白熱しました。

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若林氏の鋭いツッコミに、ファブの本質を説明しながら反論する田中氏。© FabLearn Asia 2015 Committee

パネラーからはじつにさまざまな意見が飛び交いましたが、私なりに解釈したのは「ものづくり教育が目指すのは"良い大学に行って、良い企業に就職する"といった画一的なゴールではない」ということ。20世紀は、大量生産に代表される経済合理性が最優先された「画一化の世紀」でした。一方の21世紀は、テクノロジーの進化により、個人が自分らしさを優先できる「個人化の世紀」といえるでしょう。それは言い換えれば「正解が無数にある世界」であり、みんなが同じカリキュラムで学び、同じゴールを目指すこと自体が無意味になる世界でもあります。

同時に、デジタルファブリケーション技術の進化は、これまで経済合理性の外側にこぼれていた「ものづくり」を可能にします。つまり、これまでスケールメリットがないとか地域性が強すぎるという理由で産業化が進まなかった分野に「ものづくり」の需要が生まれるわけです。こうした「ものづくりの多様化」が現実になったとき、ファブの技術やクリエイティブな思考を持った多様な人材の活躍の場は確実に増えるのではないでしょうか。

そんな「適材適所の最適化」が極限まで進むのだとすれば、デジタルファブリケーションが実現する未来とは「個人の幸せ」と「社会の幸福度」を同時に満たす、すばらしい世界なのかもしれない——。そんな風に感じました。

こうして2日間に及んだ「ファブラーンアジア2015」は、延べ約400人を超える参加者の熱気に包まれ、無事に閉幕しました。率直な感想としては、海外のSTEM教育の現状や国内の先端事例に数多く触れることができ、非常に勉強になりました。あまりにも大量のインプットをしたせいで、頭の中を整理するのに時間がかかりましたが......。

まだまだ一般的には馴染みのない「デジタルファブリケーション」という概念をいかに広め、より多くの人に興味を持ってもらうのか。そして「ものづくり教育の目指す未来」をどうわかりやすく示していけるのか。このあたりに今後の課題が見え隠れしている気がします。

日本にデジタルファブリケーション技術が本格的に紹介されてから早5年。日本のファブ・カルチャーの動向については、今後も引き続き注視していきたいと思います!

☞ SHINGA FARM の記事はコチラ
☞ レポート1日目の様子(前編)はコチラ

Text by Risa Shoji