国際ボランティア団体「DAREDEMO HERO」を訪問してきました

少し前のことになるけれど、国際協力ボランティア団体 DAREDEMO HERO(誰でもヒーロー)に遊びにいってきました。

ボランティアというよりは、文字通り、遊びに。

きっかけは、だれでもヒーローにクラウドファンディングで、寄付をしたこと。スタッフの内山さんから、寄付の御礼とともにていねいなメールをいただいたのです。

「寄贈されたピアノの弾き手がいないので、ぜひピアノを弾きにきてください」

というわけで、夫とともにタランバンにあるヒーローズハウスを訪ねてきました。



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活動を支えるのは「貧困問題を解決したい」という強い思い。

ヒーローズハウスで学ぶ子どもたちは25名。

教室に入ると、礼儀正しく日本語で挨拶をし、さらに自己紹介と将来の夢まで日本語で完璧にこなす子どもたちに軽く衝撃を受けました。身だしなみに気を遣い、清潔感を保っている姿に、「貧困層の子どもたち」というわたしの「思い込み」が、覆された瞬間でした。

彼らはみなヒーローズハウスの「奨学生」。誰でもヒーローでは、学校に通うことが困難な貧しい家庭に生まれながらも、高い学習意欲を持っている子どもたちに、お昼ごはんの提供や放課後の学習指導などの支援を行っています。

誰でもヒーローは、2013年に創設された新しい国際協力ボランティア団体。活動を支えるのは、「フィリピンの、貧困問題を解決したい」という代表の山中さんのとてもシンプルで強い思い。

団体立ち上げのきっかけは、今から10年以上前に山中さんが現地の大学生と交わした会話にあるといいます。

「当時、私はとある大学の聴講生としてセブ島に滞在していました。そのとき、貧困層出身の大学生と出会ったんです。聞けば、家族や親族が彼のためになけなしのお金を出し合い、大学に通わせてもらっている、と。彼は一族の期待を一心に背負いながら勉強に励んでいました。でも、そんな彼でさえ、卒業後に就職先がないんです。フィリピン国内に、彼らの雇用の受け皿がないからです」

山中さんは、そんな過酷な状況にもかかわらず笑顔を絶やさない彼に「なぜ笑顔でいられるのか」と尋ねたといいます。

「彼の答えは予想外なものでした。『自分が苦しい顔をしていると、周りを苦しめる。そしてその顔を見れば自分も心が痛む。自分が笑顔でいれば、周りも笑顔でいる、その顔を見れば自分はさらに笑顔でいられる』と。私はそんな彼の笑顔から、真の利他精神を学びました」

そこから山中さんの長いチャレンジが始まる。彼は仕事の合間を縫ってさまざまなボランティア活動やスタディツアーに参加し、貧困問題解決のヒントを探り続けます。

「そんなある日、以前ボランティアに参加した団体を2年ぶりに再訪すると、子どもたちが2年前と同じ服を着ていることに気づいたんです。衝撃でした。
2年間で、彼らの生活は何一つ変わっていなかった。だったら、いったい何のための支援なのか。このことは、この国の貧困支援の在り方そのものに、大きな疑問を抱くきっかけになりました」

その後、山中さんは、既存の貧困支援活動の多くが寄付などの一時的な支援に留まっていること、運営団体が活動費の多くを人件費に回さざるを得ない現状など、さまざまな問題点に気づきます。当時、有名予備校の英語講師として著書の出版やメディア出演、講演を行うなど成功を収めていた山中さんでしたが、本気でこの問題に取り組むべく、すべてをリセットしてフィリピンに渡る決意をします。

「10年かけてようやくわかったんです。結局、彼らに一時的にモノや仕事を与えても、根本的な解決にはならない。貧困が無限に再生産されている現状を根底から変えるには地道な「教育」が必要なんだ、と」

目標は「300年後、貧困層から国のリーダーを誕生させること」

最終的に彼の辿り着いた「答え」は、驚くほど大胆なものでした。

「貧困層の子どもたちに徹底した教育サポートを行い、この国を変えうる優秀なリーダーを育て、ゆくゆくは大統領を輩出する。それが私の目標です」

貧困層から国のリーダーを誕生させるーー。無謀なチャレンジにきこえるけれど、そう語る彼の目に、一切の迷いはありません。なぜなら、彼はこの目標を300年という時間をかけて達成しようとしているからです。

「300年という時間は、国を、世界を変えるのに十分な時間です。300年前、誰もアメリカにアフリカ系の大統領が誕生するとは考えなかったでしょう。もちろん、いま40代半ばの私が活動できるのは、せいぜいあと20年です。でも、それまでに数百人の子どもたちを教育することができれば、彼らはいずれ貧困層を教育する立場となり、新たなリーダーの卵を育てることができる。300年後、その数は数十万、いや数百万に増えているはずです」

山中さんは現在、セブ島で語学学校を経営しながら、HERO’S HOUSE の運営を続けています。スタッフのみなさんも、みな山中さんの理念に共感し、子どもたちの教育に尽力する高い志を持った人ばかりです。

ちなみに、寄付金を100%子どもたちの教育サポートに充てるため、日本人スタッフは完全にボランティアで活動しているそうです(スタッフはセブ島内で別に仕事を持ち、その収入で生活をしています)。

また、誰でもヒーローは昨年台風で大きな被害が出たレイテ島の支援にも積極的に取り組んでいます。災害直後から何度も現地に渡り、支援物資の提供や学校再建など、すばらしい活動を続けています。じつは私が誰でもヒーローの存在を知ったのは、この被災地支援活動がきっかけでした。

活動の様子はこちらから見られますので、ぜひご覧ください!
https://www.facebook.com/DaredemoHero2013

最後に。「誰でもヒーロー」という名称について。

団体の理念を象徴するような名称は「どんな人でも、ヒーローになれる」という山中さんの強い思いから名付けられたそうです。

「私自身、フィリピンでの学びや気付きをきっかけに、仕事で自分なりに成功することができました。何よりも今、長年の夢だった支援活動をスタートさせることもできています。すべては、夢を持ち、夢に向かって突き進むことで得られた結果です。私は誰でもヒーローの活動を通して、多くの人々に、その素晴らしさを教えていきたいんです」

恥じることなく夢を語り、ためらうことなく夢に突き進む。それを実践してきた山中さんの言葉だからこそ、力強い旋律となって、胸に響く。もし人生に迷い、明日を信じられなくなったら、私はこの言葉を思い出そうと思う。
いつでも、何度でも。

EVERYBODY CAN BE A HERO!

山中さん、内山さん、そして一緒にボランティアに参加したスクールウィズのYukiさん、本当にありがとうございました!

ピアノ弾いたら子どもたちに大人気の図。ピアノを弾いただけだけど、私もヒーローになれましたw

All Photo by DAISUKE SASAKI
text by Risa Shoji

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