【経済ネタ】人口急増中のフィリピン。高い経済成長は本当に続く……のか? 検証してみた。

こんにちは。ショウジです。

今日はフィリピンの人口増と経済成長について調べてみました。

えー、みなさんもご存知のとおり、フィリピンは日本と違って子どもが多いです。ネット上でちょっと調べれば、フィリピンの人口ピラミッドの図表はすぐに見つかるし、ほんとうにキレイな形でピラミッドを形成しててなるほどなーと思います。実際、フィリピンの出生率は3.27で、世界平均の2.1を大きく上回っています。(データ出典:世界銀行)

さて、そういう「人口増えてますよー」的な状況について単純に

「日本は少子化だけどフィリピンは人口増えてる→もっと経済成長する!」

みたいな言説をネット上でよく見かけるのですが、実際フィリピンに住んでると「本当にそうなのかな〜」という疑問もぬぐえず。。。

もちろん、フィリピンの経済が好調なのは本当。2012年度の成長率は、インドネシアやマレーシアを抜いて約7%におよんでいます。

経済オンチの私的には「そりゃー人口増えたら経済も上向きそうだよね?」以上の発想が出てこないのが悲しいところ。そんなわけで、これを機会にいろいろわからなかったことを調べてみました。



スポンサーリンク

人口の増加は経済成長にメリットもデメリットももたらす。

ちょっとでも経済に明るい人なら、当たり前に知っていることかもしれませんが、人口の増加は経済にいい影響も悪い影響ももたらすんですよね。

たとえば、日本唯一の国際問題専門誌・月刊『国際問題』(2010年7・8月合併号)掲載の 日本の人口動態と経済成長 という論文によれば、

人口増加が経済にもたらす「いい影響」

(1)労働力が増える
(2)規模の経済や分業・競争が生じて生産性を高める
(3)知識の蓄積や天然資源開発などが促進する

人口増加が経済にもたらす「悪い影響」

(1)1人当たりの所得(総所得÷人口)が減少する
(2)年齢構成が若年化し、就業人口比率が低下する
(3)多くの子供を育てるコストがかさみ、貯蓄が減少する

ということができるそうです。うむ。なるほど。つまり「人口が増える=経済が成長する」という等式は成り立たない ということです。

高度経済成長は、たいてい「人口ボーナス期」に起きている!

ただ人口が増えるだけでは経済は成長しない。むしろ、人口の増加が経済成長にプラスにはたらくのは、少子化が始まったタイミング、いわゆる「人口ボーナス期」からなんです。私ずーっと勘違いしてました。人口ボーナスって単に出生率が増えてる期間のことだと(汗)

“人口ボーナスというのは、人口がとめどもなく増えていく人口爆発のことではない(中略)医療の普及や衛生状態の改善で乳幼児の死亡率が下がると、多産多死から多産少死になって若年人口が大きく増える。だが、こうした多産少死が定着すれば人口は膨張するから、政府は家族計画や一人っ子政策で子どもの数を減らそうとする。また、産業構造が農業から工業・サービス業に変わり、家計所得が増えて自由な生活が可能になるとともに、子育ての教育費負担が重くなると、成人した若者たちは両親の世代ほど多くの子どもを持とうとはしなくなるだろう。このように、多産少死は少産少死へと移行していく。
人口ボーナスは多産少死から少産少死へと人口動態が変化する時期のことで、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の増加として表わされる。”

Zai ONLINE 橘玲の世界投資見聞録 中国経済を待ち受ける「人口オーナス」の衝撃 より

たしかにですね、戦後に発生したさまざまな国や地域の高度経済成長は、この「人口ボーナス」期に起きてます。ハーバード大学のD.E.ブルームをはじめとする研究チームの実証分析(*1)によれば、ほとんどの国の高度経済成長は、生産年齢人口の急増に連動しているとのこと。とくに、東アジアにおける1人当たり国内総生産(GDP)の成長率の約3分の1は人口変動、つまり人口ボーナスによるものであった、と指摘しています。

(*1) Bloom,D.E. and D.Canning (2004) “Global Demographic Changes:Dimensions and Economic Significance,”
paper presented at the International Conference organized by the Federal Reserve Bank of Kansas City, August,.

ここで、アジア各国の「人口ボーナス期」がどうなっているか見てみましょう。

フィリピンの人口ボーナス期、長っ!!!!

これを見ると、あと30年以上は人口ボーナス期が続くことになります。
ならば、フィリピンの経済はやっぱり成長しそうだね。ふわっふう!
……と、話はそう簡単なわけではないんですよね。

ただし、人口ボーナスだけが高い経済成長率の理由ではない

そうなんです。経済成長は、たいてい人口ボーナス期に起きてるのは間違いないんですが、単純に「人口ボーナス=経済成長する!」という等式は成り立たないのです。それについては、ウォール・ストリート・ジャーナルの この記事 がわかりやすいです。

“しかし、フィリピンの例でもわかるように、若い人口だけでは拡大する世代の支援には十分ではない。
70年代や80年代にアジアの工業国が経済改革に乗り出した時、フィリピンは取り残された。フィリピンの独裁者フェルディナンド・マルコス元大統領の支配の下で汚職が多発し、毛沢東主義のゲリラやイスラム教の分離主義者などが絡んだ忌まわしい暴動も頻発した。フィリピン人の多くが国を離れた。今日では、フィリピンの1億人の国民のうち1000万人超が海外で働き、年間200億ドル(約2兆円)以上を本国に送金しており、こうした資金が国に残された家族にとって生命線となっている。政府や中銀の統計で明らかになった”

(引用)景気拡大のカギは出生率 フィリピンは好例 – WALL STREET JOURNALより

記事では、中南米諸国についても言及。中南米諸国は80年代の東アジアと同様に「人口ボーナス」の恩恵に与りながら、政治の混乱や経済計画の不備によって経済成長は限定されたものにとどまった、と指摘してます。

なるほどなあ。たしかに混乱してるもんな、中南米。アルゼンチンとか国家破綻しまくってるし。。。実際、フィリピンに関しては「人口増加がかえって悪影響になった」という実証分析を行った論文も存在してます。

インドの Kannan Navaneetham が2002年に発表した論文(*2)には、フィリピンが当初、他のASEAN諸国とほぼ同水準の人的資本があったにもかかわらず、成長から取り残されてしまったのは(アジアの病人なんて呼ばれてますからね)、高水準な合計特殊出生率、貿易の開放度、政策の不備などに原因があったのでは、と推測しています。

つまり、人口ボーナスの恩恵をしっかり受けるためには、市場インフラ、教育制度、雇用、税制のほか、政府が成長を底支えする「すぐれた政策」を実行できるかが重要ということなんですね。

(*2)AGE STRUCTURAL TRANSITION AND ECONOMIC GROWTH: EVIDENCE FROM SOUTH AND SOUTHEAST ASIA – K. Navaneetham

フィリピンの持続的な成長には「人口抑制」政策が必須?

このようにフィリピンでは、せっかく人口ボーナス期にあっても、いろいろな要素が重なって成長が阻害されてきたことがわかりました。

「じゃあ、なんで最近は経済が成長してるのよ?」
という疑問が出てくるわけですが、みずほ総合研究所が2012年に発表した「活気を取り戻すフィリピン経済」 と題したレポートによれば、アジアNIEs 諸国の労働力不足や賃金上昇、アキノ政権の手堅い政権運営などによる投資対象としてのフィリピンの再評価が起きている、ということが言えるそうです。
そして同レポートでは、フィリピン経済は今後3〜5年はおおむね5%程度の経済成長を実現できる、と予測しています。ただですね、長期的に見ると、やっぱりリスクはぬぐえません。同レポート内では、以下のようにフィリピンの構造的な課題を指摘してます。
“これまでの低すぎる投資対象としての評価が是正される過程(=少なすぎた対内直接投資が実力に見合った水準に戻る過程)で、一時的に堅調さを取り戻したに過ぎないとも言える。労働力供給の豊富さだけが強みでは、自国の賃金上昇と、ミャンマー、バングラデシュなどの後発国の追い上げにより、いずれ投資ブームは終わるであろう。”
 そもそも、フィリピンがこれまで低成長に甘んじてきたのは、

「腐敗・汚職の蔓延」
「低税収によるインフラ整備の遅れ」
「貧困失業を背景とする社会不安」
「持続的な内戦」

などの構造的な問題があったからです(同レポートより)。フィリピン経済の問題を把握するには、この図が超わかりやすいです(みずほ総合研究所さまから転載させていただきました。ありがとうございます!)

でも、逆を言えば、フィリピンでちゃんとした政策が実行されて、出生率も抑えられれば、持続的な経済成長は十分に可能だということもできるわけです。政治の腐敗をなくし、人口抑制に成功し、国内に雇用をもっと増やしたり。。。という問題を解決できれば、すごく成長が期待できる国。それがフィリピン。
要は、政治次第ってことになるのかな。。。でも、フィリピンに住んでいると、そんな日は本当に来るのかしら〜と思ってしまいます。
ほんと、フィリピンではカジュアルに賄賂とか要求されるからね!
とりあえず、今日のところの結論は、そんなところでしょうか。人口と経済についてもっと知りたい方はこちらの参考文献もチェック〜
老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914) 老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914)
大泉 啓一郎中央公論新社 2007-09
売り上げランキング : 28887Amazonで詳しく見る by G-Tools

 

人口成長と経済発展―少子高齢化と人口爆発の共存 人口成長と経済発展―少子高齢化と人口爆発の共存
山口 三十四有斐閣 2001-11
売り上げランキング : 420430Amazonで詳しく見るby G-Tools

 

スポンサーリンク

コメントを残す