ウェブメディア「Yahoo! ニュース特集」で記事を書きました。
観光でやってくる訪日外国人が2400万人を突破した日本。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さらに多くの外国人観光客が押し寄せるとも言われています。
一方、観光目的ではなく、日本の高品質な医療サービスを求めて訪日する外国人もここ数年、じわじわと増え続けています。このように医療を目的にして海外に渡航する行為は、医療ツーリズムと呼ばれ、アジア諸国を中心に新たな成長産業として注目されているのです。
医療に「公益性」が重視される日本
実際、シンガポールやタイ、韓国では国を挙げて推進しています。例えば、心臓疾患を抱えるアメリカ人が自国よりも安く手術ができるシンガポールに行って心臓手術を受けたり、医療技術が進んでいない新興国の富裕層ががんの先進治療を受けたり……といったことはよくある話。外国人がタイで性転換手術を受けたり、韓国で美容整形手術を受けたりするのも、広い意味では医療ツーリズムですよね。こういう事例が増えれば、外国人が支払う高額な治療費によって、医療ツーリストを受け入れる国の経済が潤うわけです。
そんなわけで、日本でも2010年頃からこの「医療ツーリズム」を推進しようとする動きが出始め、日本経済の新しい成長戦略の一つとして期待が高まりかけたんですね。ところが、医療界をはじめとする猛烈な反対にあい、進まなかった。
その最も大きな理由の一つが、医療における「公益性」です。なぜ公益性が重要視されるのか……については、ぜひ記事を読んでいただければと思うのですが、最近ではこの医療ツーリズムを取り巻く状況に変化がでてきていて、ほんとうに少しずつですが容認の方向に向かっているようです。
ただし「ツーリズム」という言葉は禁句のまま。「医療ツーリズム(medical tourism)」は世界中で通用する一般語なのですが、日本では商業主義をイメージさせるということで、あらゆるところで自主規制されているのが現状です。じつに日本らしい忖度文化。
(鹿児島県指宿市のメディポリス国際陽子線センターの治療装置。すごい迫力でした)
中国国内には悪徳なコーディネート会社も存在する
ところで、医療目的で日本を訪れる外国人は、ほとんどの場合、コーディネート会社を通じて来日します。日本国内のコーディネート会社については、優良業者に対する認定制度もあるのですが、中国国内のコーディネート企業の中には、超適当なうたい文句で集客してる悪徳業者も少なくないといいます。「日本でCTを受けたらがんが治る」みたいな明らかな嘘で堂々と営業している猛者もいるそうです。治るかよ!
今回、取材が難航したのと(医療目的の外国人を受け入れていることを公表したがらない病院が多かったため)、某所から怒られたりしたのとで、執筆にものすごく時間がかかってしまったのですが、やっと公開できてよかったです。取材に協力してくださった方々には、心から御礼を申し上げます。
とても思い入れのある力作ですので、ぜひ読んでみてください。
誰のための医療か――沸騰する「医療ツーリズム」の光と影
個人的には、日本人の医療リソースを脅かさない範疇であれば推進してもいいのでは、と思いました。
医療ツーリズムについて詳しく知りたい方には、こちらの本がおすすめ。