Yahoo! ニュース特集『「被害者の実名」なぜ報じるのか』

ウェブメディア「Yahoo! ニュース特集」で記事を書きました。

「被害者の実名」なぜ報じるのか

日本のメディアの多くは、事件が起きると被害者を「原則、実名」で報じてきました。しかし、最近では被害者を実名で報道することについて、是非を問う声が強まってきています。

被害者の遺族が匿名での報道を望んだり、警察がその意を汲んで実名を伏せて事件発表を行うケースも実際に増えてきています。同時に、事件の被害者の実名や顔写真を掲載したメディアが、厳しく批判される風潮も強まっています。

メディアは「報道の自由」を持ち、「国民の知る権利に奉仕する公益性」のために報道を行なっています。しかし、なぜ報道に被害者の実名という情報が必要かについては、あまり社会に理解されていない現状があります。今回の記事は、日本で匿名報道を望む声が高まっている背景、そしてメディアの「報じる姿勢」や公益性について、あらためて問い直すために書きました。



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メディアは被害者やその遺族に寄り添うことができているのか?

お話をうかがったのは、東京新聞の加古さん、NHKの松井さん、東京大学大学院教授の宍戸さん、そして被害者遺族の岩瀬さんご夫妻です。それぞれの立場から、実名報道に対する考えや意見を語っていただきました。

私自身も、ライターとしてメディアで仕事をしています。ただ、これまで事件報道について記事を書くことはほとんどありませんでした。しかし、今回の企画で被害者遺族の方にお話をうかがい、「正しい事件報道のあり方」について深く考えるようになりました。

お話を聞かせてくれた岩瀬さんご夫妻は、2時間以上にわたり、事件がどのように報道されたか、その結果、何が起きたかについて詳細に語ってくださいました。最愛の娘さんを殺害され、深い悲しみのさなかにいた家族を、配慮のない報道の数々が追い討ちをかけたこと。まったく許可した覚えのない個人情報が、どんどん漏れ出していく恐ろしさ。なんの取材もなく、憶測で書かれた心無い誤報。ご遺族が、どれだけ報道によって傷ついたかが、ひしひしと伝わってきました。

しかし、そのようにメディアによって辛い思いをしたにもかかわらず、岩瀬さんご夫妻は今回、私たちの取材に快く応じてくれました。おふたりは、事件で大切な家族を殺された遺族がどんな思いでいるのか、報道に何を求めるのかを伝えるためには、やはりメディアの力が必要、とその理由を話してくれました。

実名か匿名か、を問う前に、記者の方々には報道の向こう側にいる被害者やその遺族に思いを馳せて欲しい。その言葉が、強く耳に残りました。

インターネットの登場以降、ひとたび事件報道がなされれば、そこを起点にが虚実入り混じった情報がネット上に拡散するようになりました。被害者や遺族の方々には、事件が起きた後も、延々とそういった情報によって不利益を被りつづける現実があります。実際、岩瀬さんご夫妻も、某裁判官のソーシャルメディア上での心無い発言によって、深く傷ついたと話していました(下記リンクに詳細があります)。

東京高裁 ツイッター書き込み 岡口裁判官を厳重注意処分

インターネット時代のジャーナリズムはどうあるべきなのか。速報性と、被害者への配慮のバランスを、どうやって取っていくのか。難しい問題ではありますが、「被害者や遺族の心に寄り添う」取材姿勢を忘れずにいよう、とあらためて思いました。

ぜひご一読いただければうれしいです。
「被害者の実名」なぜ報じるのか

 

 

 

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